神田西小川町。
オフィスビルと細い路地が混在するこのエリアに、赤煉瓦の外壁と重厚な木製ドアが目を引く一角がある。
「ワタビル」と刻まれた古い建物の一階。そこに DILL Coffee Parlor はある。
派手な看板はない。扉に貼られたメニュー表と、手書きのチョークボードだけが、ここが営業中であることを静かに示している。

煉瓦造りのモダンな外観
外観は飾らない。
赤煉瓦の壁、経年した木枠の引き戸、白黒のタイル張りの玄関先。観光地のカフェとは違う、どこか日常に溶け込んだたたずまいだ。
ガラス面には「DILL Coffee Parlor」のロゴとともに、住所と営業時間がシンプルに記されている。
8:00〜20:00、無休。ウィンドウ越しに見える店内は、豆のパッケージや小物が棚に並び、落ち着いた照明に包まれていた。



ハンドドリップのアイスコーヒー
ハンドドリップのアイスコーヒーは、丸みを帯びたグラスで供された。透き通った深い琥珀色。
飾り気のない一杯だった。でも、口に含むと、ちゃんとコーヒーの輪郭がある。冷えているのに、薄くない。

クランベリードリームバー
ケーキはクランベリードリームバー。
白い丸皿に、四角くカットされた一切れ。
生地のなかにはクランベリーが散っていて、上面にはクリームが平らに敷かれ、その上にさらにクランベリーがたっぷりと盛られている。

見た目は華やかなのに、素朴さがある。
甘さを主張しすぎず、クランベリーの酸味が全体を引き締めていた。コーヒーと交互に口に運ぶと、互いが邪魔をしない。
余韻のある場所
席を立つとき、なんとなく名残惜しかった。
特別なことは何もなかった。でも、コーヒーはきちんとしていて、ケーキは誠実で、空間には無駄がなかった。
小川町に用があるときだけでなく、ここを目的に来てもいいかもしれない、と思いながら木製の扉を押した。