「ホテルに泊まるために前橋へ行く。」
少し前なら、そんな旅は珍しかった。
でも今は違う。
白井屋ホテルは、ホテルという枠を超え、建築・アート・食・街歩きをひとつにつなぐ”カルチャーの拠点”になっている。
そして、その日常に溶け込むようにあるのがBlue Bottle Coffee Shiroiya Cafeだ。
ここではコーヒーも、建築体験の一部になる。
建築そのものが、街のランドマーク
まず目に飛び込んでくるのは、藤本壮介が設計したグリーンタワー。
建物を覆う緑。
空中に浮かぶようなボリューム。
自然と建築の境界が曖昧になるデザインは、前橋の街並みの中でも圧倒的な存在感を放っている。
約300年の歴史を持つ旅館「白井屋」をリノベーションしたヘリテージタワーと、新築のグリーンタワーが共存することで、「過去」と「未来」が一つのホテルに収められている。
ブルーボトルが、街に開かれている。
ホテルの敷地にあるブルーボトルは、宿泊者だけのための場所ではない。
街を歩く人がふらっと立ち寄り、
近所の人がコーヒーを飲み、
旅行者がひと息つく。
そんな前橋の日常が自然と流れている。

ガラス越しに街を眺めながら飲む一杯は、東京の店舗とも少し違う時間が流れていた。

空間も、一杯のコーヒーも設計されている。
店内は芦沢啓治建築設計事務所によるデザイン。
レンガの床や左官仕上げのカウンター、木の家具が、無機質なコンクリートと絶妙なバランスをつくる。
中央にはゆるやかな曲線を描く大きなソファ。
誰かと座っても、一人で座っても心地いい。
ブルーボトルらしいミニマルさに、この場所ならではの温度が加わっていた。
アートを眺めながらコーヒーを飲む。
壁に飾られた作品も、ホテル全体のアートコレクションの一部。
白井屋ホテルには国内外のアーティストによる作品が点在し、ホテル全体が一つの美術館のようになっている。
カフェで過ごす時間も、その鑑賞体験の続きを味わっているようだった。

前橋という街が、少し好きになる。
ブルーボトルを出たら、そのまま馬場川通りを歩いてみる。
古い建物と新しい店。
リノベーションされた商店。
歩くほどに、この街が少しずつ変わっていることに気付く。
白井屋ホテルは、その変化の象徴なのかもしれない。
白井屋ホテルを訪れて感じたのは、「泊まる場所」というより、「街を楽しむ入口」だということ。
建築を見て、
アートに触れて、
コーヒーを飲み、
そのまま前橋を歩く。
そんな一日が自然とできあがる。
目的地はホテルなのに、気付けば街そのものが好きになっている。
それが、この場所のいちばんの魅力だった。