吉祥寺は、何度歩いても新しい店に出会う。
駅前の賑わいを少し抜けた先。
ガラス越しに見える薪窯と、ふわっと漂う小麦の香りにつられて扉を開けると、そこがISENTEIだった。
店の中には、気取った空気はない。
でも、どこか凛としている。
その距離感が、この街らしい。
花を飾るのではなく、花を食べる。
運ばれてきたピザを見て、少しだけ驚く。
焼き色のついた生地の上には、生ハムとルッコラ。
そして、その隙間を埋めるようにエディブルフラワー。
彩りのためだけじゃない。
料理として自然にそこにある。
写真を撮りたくなる。
でも、眺めているより、早く食べたくなる。
そんな一枚だった。
生地だけで、店のことが分かる。
外側は香ばしく。
中は驚くほど軽い。
噛むほど小麦が甘くなっていく。
具材が主役ではなく、生地そのものが美味しい。
だから最後の耳まで残らない。
ナポリピッツァというより、「今日はこの生地を食べに来た」と思えるピザだった。
吉祥寺には、こういう店が似合う。
流行っているから行く店ではない。
SNSで見つける店でもない。
ふらっと歩いていて、なんとなく入ったら好きになってしまう。
そんな偶然が、まだ吉祥寺には残っている。
ISENTEIも、そのひとつ。
急いで食べるより、ワインを飲みながらゆっくり過ごしたい。
そんな気分の日に思い出したくなる。