「伊東に行くならハトヤ。」
このフレーズを聞いたことがある人は、きっと少なくない。
伊東温泉を代表する老舗ホテル、ハトヤホテル。

1947年創業という長い歴史を持つこの場所は、単なる温泉旅館というより、昭和の観光文化そのものが残っているようなホテルだ。
今の時代に泊まってみると、少し不思議な感覚になる。
古い。でも、古臭くない。
むしろ、今だからこそ新鮮に感じるものが、館内のあちこちに残っている。
「ホテルに泊まる」より、時間旅行をする
ハトヤホテルの魅力は、部屋や温泉だけではない。
ロビーから客室へ向かう廊下、独特な照明、案内表示、広々とした空間。
ひとつひとつを見ていると、現在のホテルとは明らかに違う時間の流れを感じる。
昭和の大型温泉ホテルが持っていた、少し大げさなくらいのスケール感。
高い天井にシャンデリアが輝き、広い館内には当時の面影が残っている。
効率やコンパクトさが重視される今のホテルとは、真逆の存在だ。
だから面白い。
客室から眺める伊東の街
ハトヤホテルは伊東の高台に位置している。
客室によって異なるものの、窓の外には伊東の街並みや相模湾、天城の山々が広がる。
客室は和室を中心に、洋室や特別室なども用意されている。
そして少し驚くのが、客室のお風呂も天然温泉だということ。
源泉から直接引き込まれた温泉を、部屋でも楽しめる。
派手な設備を求めるというより、ゆっくり湯に浸かって、窓の外を眺める。
そんな過ごし方がよく似合う。
ハトヤの温泉は、ちゃんと気持ちいい
レトロな雰囲気が注目されがちなハトヤホテルだけれど、もちろん温泉宿としての魅力もある。
ホテルには5つの天然自噴温泉があり、基本的には掛け流し。高温のため加水冷却される場合もあるという。
「昭和レトロなホテルを見に行く」という感覚で訪れても、最後にはしっかり温泉旅館として満足できる。
このバランスがいい。

かわいいのは、ハトの存在感
館内を歩いていると、とにかく「ハト」が目に入る。
浴衣やお土産、オリジナルグッズなどにもハトのモチーフ。
ホテルの売店では、昭和の雰囲気を残したオリジナルグッズも販売されている。
ブランドロゴを前面に出した今っぽいホテルとは違う。
でも、この一貫したデザインが妙にかわいい。
古いものをそのまま残すだけではなく、「ハトヤ」という世界観がちゃんと残っているのだ。
今、ハトヤに泊まる理由
昭和レトロという言葉がブームになって久しい。
喫茶店、純喫茶、古着、フィルムカメラ、レコード。
少し前まで「古い」と言われていたものが、今では新しい価値を持っている。
ハトヤホテルも、そのひとつだと思う。
ただし、ここは昭和レトロ風につくられたホテルではない。
本当に昭和の時代に多くの人が訪れ、その時間を重ねてきたホテルだ。
だから、少し傷んだ壁も、昔ながらの照明も、独特な案内板も、全部がそのまま魅力になる。

伊東で、少しだけ時間を戻す
最新のホテルに泊まる旅もいい。
けれど、ときには少し古いホテルに泊まってみるのも悪くない。
夕方、温泉に入り、館内を歩く。
夜は食事をして、部屋に戻る。
窓の外には伊東の街の明かり。
スマートフォンを置いて、少しだけ昔の旅行者になった気分で過ごしてみる。
ハトヤホテルは、そんな時間を楽しむためのホテルなのかもしれない。
「伊東に行くならハトヤ。」
昔のCMのフレーズを、今度は自分の旅として確かめてみる。
そんな伊東旅行も、なかなかいい。