1950年代の家具は、なぜ70年以上経った今も選ばれ続けるのだろう。
イームズの椅子。
ジョージ・ネルソンの時計。
ハンス・J・ウェグナーのYチェア。
そして、ルイスポールセンの照明。
ミッドセンチュリーと呼ばれるデザインは、流行というより「暮らし方」そのものを変えた時代だった。
大量生産が進み、人々の生活が豊かになっていく中で、家具や照明は使うための道具から暮らしを豊かにする存在へと変わっていった。
その時代を象徴するブランドのひとつが、デンマークのルイスポールセン(Louis Poulsen)である。
家具だけでは、部屋は完成しない
ミッドセンチュリーの家具を置いても、どこか物足りなく感じることがある。
理由は意外とシンプルだ。
部屋の印象を決めているのは家具ではなく、「光」だから。
ルイスポールセンは100年以上前から、そのことを知っていた。
ブランドが追求してきたのは、照明器具ではない。
人が心地よく感じる光のあり方だった。
その思想は、今でもすべてのプロダクトに受け継がれている。
ミッドセンチュリーは「形」ではなく「思想」
近年、「ミッドセンチュリー風」という言葉をよく見かける。
ウォールナット。
曲木。
スペースエイジ。
オレンジやブラウンの配色。
もちろん、それらも魅力のひとつだ。
けれど、本質は見た目ではない。
ミッドセンチュリーのデザインが目指していたのは、機能と美しさを無理なく共存させること。
余計な装飾を削ぎ落とし、それでも豊かさを感じられる暮らしをつくることだった。
ルイスポールセンの照明も、まさにその考え方の延長線上にある。
光までデザインした名作「Panthella」
撮影した写真は、1971年にデザイナー、ヴェルナー・パントンが手がけたPanthella(パンテラ)。
半球状のシェードは、単なるデザインではない。
光を柔らかく拡散させ、ベース部分にも反射させることで、部屋全体を包み込むような明るさを生み出している。
昼間に見れば、美しいオブジェ。
夜になれば、空間そのものの雰囲気を変える存在になる。
だからこそ、多くのインテリア好きが「最後に欲しくなる照明」として名前を挙げる。
名作家具の隣には、名作照明がある
ミッドセンチュリーの名作家具を紹介する記事は数多くある。
しかし、本当に心地よい空間をつくっている家を見ると、必ずと言っていいほど照明にもこだわっている。
イームズのラウンジチェア。
ウェグナーのYチェア。
フィン・ユールのソファ。
その隣には、PHシリーズやPanthellaのようなルイスポールセンの照明が静かに置かれている。
家具と照明は別々の存在ではなく、一つの空間として完成する。
だからミッドセンチュリーは、70年以上経った今も古くならない。
流行の家具を買うことはできる。
でも、空間は家具だけでは完成しない。
ミッドセンチュリーが今も世界中で愛される理由は、椅子の形でも、テーブルの素材でもなく、「どう暮らすか」という考え方が今でも色褪せないからだ。
ルイスポールセンの照明は、その思想をもっとも身近に感じられるプロダクトなのかもしれない。
夜、部屋の灯りをひとつだけ点けてみる。
その時間が少しだけ豊かに感じられるなら、それこそがルイスポールセンが100年以上デザインし続けてきた「光」の価値なのだろう。