サッカーを観に行く日は、試合開始の90分だけが特別なわけじゃない。
スタジアムへ向かう道。
赤いユニフォームを着た人たち。
ゲートをくぐった瞬間の高揚感。
そして、照明に照らされたピッチを最初に見たとき。
その全部が、ひとつの体験になっている。
8月29日。
浦和レッズと横浜F・マリノスの一戦を観るため、埼玉スタジアム2002へ向かった。
キックオフは19時。
まだ暑さの残る夏の夜だった。

夜の埼玉スタジアム
スタジアムに着くと、すでに周囲は赤で埋まり始めていた。
浦和レッズのホームゲームでは、スタジアムへ向かう時間から少しずつ気持ちが切り替わっていく。
普段ならただの道なのに、今日は違う。
赤いシャツを着た人。
マフラーを巻いた人。
家族で歩く人。
友人同士で向かう人。
それぞれが同じ方向へ歩いている。
埼玉スタジアムでの、この時間が好きだ。
試合が始まる前なのに、もう少しだけ特別な一日になっている。
スコア以上に、落ち着かない前半
試合は序盤から動いた。
横浜F・マリノスが38分に谷村海那のゴールで先制。
しかし、そのわずか2分後。
浦和がマテウス サヴィオのゴールで追いつく。
1-1。
スタジアムの空気が一気に変わる。
サッカーは、ゴールひとつでここまで空気が変わる。
テレビで観るのとは、やっぱり違う。
歓声の大きさもそうだけれど、何よりスタジアム全体が同時に反応する感覚が面白い。
前半はそのまま1-1で終了。
後半、試合はさらに動く
後半19分。
再び横浜FMの谷村海那。
この日2点目となるゴールで、浦和は1-2と追いかける展開になる。
ここからの埼玉スタジアムがすごかった。
1点を追いかけるホームチーム。
それを後押しするスタンド。
ピッチ上の選手だけではなく、観客も一緒になって試合を動かしているような感覚になる。
そして64分。
根本健太。
2-2。
振り出しに戻る。
この時点で、まだ終わる気配はまったくない。
そして、71分
次の1点を取ったほうが勝つ。
そんな雰囲気になっていた。
そして71分。
南野遥海。
浦和が3点目を奪う。
2-1から2-2。
そして3-2。
わずかな時間の中で、試合の景色が何度も変わった。
残り時間は、長いようで短い。
時計が進むたびに、少しずつ勝利が近づいてくる。
そして、試合終了。
浦和レッズ 3-2 横浜F・マリノス。
浦和が逆転勝利を飾った。
入場者数は33,863人。
埼玉スタジアムの夜は、赤い歓声に包まれた。
33,863人の中のひとりとして
今回、実際にスタジアムで観戦して思ったのは、
やっぱりサッカーは現地で観るものだ。
という、少しベタだけれど、結局そこに戻ってくる感覚だった。
テレビなら、リプレイもある。
選手の表情もアップで見られる。
試合の流れだって分かりやすい。
でも、スタジアムにはテレビには映らないものがたくさんある。
ゴールが決まった瞬間の地鳴りのような歓声。
誰かのチャント。
隣の席の人が思わず立ち上がる瞬間。
試合が終わったあとのスタンドの空気。
そして、夜の埼玉スタジアムそのもの。
そういうものを含めて「観戦」なのだと思う。

勝った夜の帰り道
試合が終わり、スタジアムを出る。
さっきまで何万人もの人がいた場所から、少しずつ人が流れていく。
勝った日は、帰り道まで少し気分がいい。
3-2。
決して楽な試合ではなかった。
2度リードを許し、それでも最後にひっくり返した。
浦和にとっては、今季リーグ戦初勝利。
だからこそ、この日の勝利はただの1勝以上に感じられた。
スタジアムに行った人にしか分からない熱がある。
その熱を、家に持ち帰る。
それも、スポーツ観戦の楽しみのひとつなのかもしれない。
埼玉スタジアムで、サッカーを観る。
浦和レッズの試合を観に行く。
それだけなら、簡単な話だ。
でも実際には、
街を歩いて、
スタジアムへ向かって、
席に座って、
照明がついたピッチを眺めて、
90分を過ごして、
最後にスタジアムを出る。
その一日全部が、ひとつの記憶になる。
この日のスコアは3-2。
でも、たぶん覚えているのはスコアだけじゃない。
夜のスタジアムと、赤いスタンド。
それが、この日の一番の記憶になった。
サッカーを観るために、少し遠くまで出かける。
知らない席に座る。
知らない人たちと同じ瞬間に声を上げる。
そうやって過ごす夜も、悪くない。
むしろ、大人になってからの休日には、こういう時間が必要なのかもしれない。